では、具体的に記述で点数を稼ぐためには、どのような学習方法をとるべきなのでしょうか。
まず、前提として、行政書士の記述は運による要因が強いということを理解しなくてはなりません。
出題されやすい論点はもちろんありますが、民法だけでも1,000条以上、条文があります。
条文全てに目を通すだけでも、一定の時間が必要となります。
また、記述で得点を獲得するためには、当然ですが、目を通すだけでなく理解し、一言一句間違えずに解答しなくてはなりません。
一言一句暗記することは、可能なのでしょうか。
無理とは思いませんが、難しいことは確かですし、記述を解答する際には丸暗記では対応することができません。
行政書士試験 記述について
私は、記述を46点取得し(約8割正解)、合格しました。
自己採点では、50点以上取得できたと確信していました。
そのため、46点という結果を見たときは、予想以上の低さに驚いたと同時に、記述の採点への不信感も感じました。
模範解答と照らし合わせてみても、やはり50点以上だと考えています。
しかし、記述は、配点や自分の正誤(部分点)を知ることはできないので正確に確認する方法はありません。
そのため、大前提として予想よりも点数が低くなることが多いと考えていたほうが良いと思います。
自己採点よりも点数が高くなる可能性は低いですし、高い予想をすることにメリットはありません。
前テーマでお伝えの通り、行政書士試験の記述は人が採点しています。
つまり、採点ミスを起こしているかもしれません。
しかし、記述に関しては、細かな正誤が通知されないので、採点ミスが起きていても泣き寝入るしかないのです。
そのため、記述解答の大前提として、採点者が採点をしやすいように、「シンプルに書く」ということを心がける必要があります。
もちろん、行政書士試験のシステムや関わっている人を疑っているわけではありません。
しかし、行政書士試験は、毎年4万~5万人受験しています。
4万~5万人の記述を照らし合わせながら、正誤を判断していくというのは、至難の技と言わざるおえません。
もちろん、正答例とほぼ同じ答えを導き出せれば、採点者の誰から見ても、正解と言えるでしょう。
しかし、正誤の判断がつきづらい答えの場合、「この受験者は正解で、この受験者は不正解」とどこかで線引きをしなくてはなりません。
数十人の受験者で行われる試験であれば、正解と不正解のラインを明確にすることは難しくないかもしれません。
繰り返しになりますが、行政書士試験の受験者は毎年4万~5万人です。
ラインを明確にし、正当な判断が可能なのでしょうか。
記述は、1文言8点近くを占める場合もあると言われています(公式には発表されていません)。
つまり、正誤のラインが明確でない答えをご自身が解答してしまった場合、合否を左右する判断は、採点者に委ねられるということなのです。
行政書士試験は、難関資格です。
私の知り合いにも、最長で目指してから9回受験したという人もいます。
人生をかけて勉強して、採点者の判断によって、合否が左右されるのはあまりにも残酷です。
繰り返しになりますが、私は、行政書士試験のシステムに疑問があるわけではありません。
正確な知識を問うためにも記述問題は、あって然るべきだと思います。
つまり、私が言いたいことは、行政書士試験のあるべき姿を正確に理解するべきだということです。
合格に必要な知識を有していても、記述で1問全くわからない出題があれば、不合格になる可能性が高くなります。
逆に、合格に必要な知識を有していなくても、記述がたまたま全て学習した条文や論点であれば、合格の可能性が高くなります。
記述は、3問出題で60点満点です。
行政書士試験は、たった1問の差で、合否が分かれてしまう試験なのです。
行政書士試験について
行政書士試験の合格率は毎年約10%なので、10人に1人は合格できる計算になります。
つまり、9人は学習方法が間違っていて、1人は適した学習方法を行っているということです。
行政書士試験は、司法試験や司法書士と比べて、難易度は低くなります。
司法試験や司法書士を目指して勉強していても、合格できなかったということは合格率や難易度を見ても納得ができます。
しかし、行政書士の試験は合格率約10%です。
しっかりと、対策と努力を重ねれば、必ず合格できる資格です。
合格ができないのであれば、努力が足りないか、学習方法が間違っています。
「行政書士は、必ず合格できる。」と考えてください。受験勉強中は、様々な誘惑や挫折を味わうと思います。
しかし、それも全て合格までの一歩でしかありません。
多くの受験生の方は、誘惑に負けてしまうか、挫折してしまうだけなのです。
つまり、誘惑に負けず、挫折をしないと決めてください。
誘惑には勝てないし、挫折はご自身の心とは別に起こるものと考えている方もいらっしゃいます。
しかし、それは適切ではありません。
誘惑に負ける決断をし、挫折をするという決断をしただけなのです。
誘惑に負けることと挫折は全てご自身で決めるものなのです。
家に帰ったらバラエティを見よう。模試で点数が悪かったからもうだめだ。
全てはご自身が決めるものなのです。
テレビを見たいから、ニュースを見よう。模試で思うような点数が取れなかったから、もっと勉強しよう。
と決めれば良いのです。
行政書士試験は、片手間では合格は不可能です。
人生をかけて、最大限の努力をしなくては掴めない資格です。
また、合格し、実務が始まれば、離婚問題や相続問題などセンシティブな問題にも介入します。
つまり、行政書士は、人様の人生を左右してしまう事柄にも、頭をつっこむ仕事です。
行政書士試験を突破できるくらいの努力や我慢ができない方は、実務に入っても信用されることは難しいと言えます。
依頼者の方は、案件によっては、人生をかけて依頼をされます。
ご自身の知識や行動次第で、大きくご依頼者様の人生が変わってしまうかもしれないのです。
行政書士は、人様の人生に責任を持たなくてはならない仕事です。
つまり、自分の人生にも責任を持てる人でなくてはならないのです。
自分の人生に責任を持てなくては、依頼者の人生に責任を持つことなんてできません。
ご依頼者様は、言ってしまえば他人です。
身内であれば、親身になれることも、他人で、しかも、お金で雇われている状態で依頼者の人生の責任を持たなければならないのです。
そのため、行政書士には、強い信念と根気が必要になります。
行政書士になったら、どのような信念を持ち、業務に励むかを、今、決めてください。
それは、今後、変わっても構いませんし、素晴しい信念でなくても良いです。
お金をとにかく稼ぎたいでも良いでしょう(結果的に多くの依頼者を助けられるとも考えられます)。
もちろん、正義感が強い方は、社会的弱者を救いたいでも良いでしょう(お金は稼げないかもしれませんが、感謝やご自身の存在意義を大いに感じられることだと思います)。
大事なのは、「今」どのような信念を持って、試験に取り組めるかです。
長い試験勉強中は、必ず、心のアップダウンがあります。
弱気になったり、疲れてしまったりするのは当たり前のことです。
そんな時、ご自身の信念はご自身を助けてくれます。必ず設定してください。
信念を持つだけで、試験勉強中のやる気や試験当日の勢いが変わってきます。
まずは、信念を持つことが、得点アップの大前提です。
では、具体的にどのような学習を進めていくことが大切なのでしょうか。
行政書士試験 記述の学習方法
ここからは具体的な、行政書士試験の記述学習方法をご紹介します。
まず、前述の通り、記述は人が採点をしています。
そのため、回りくどい言い回しでの解答は、厳禁です。誰が採点しても、明確に正解だと判断できるシンプルな書き方をすることが大切です。
学習を進めていくと、記述を解く際に、知識が邪魔をして、「こうとも考えられる。でも、この場合もある。」など、様々な条文や判例が頭を巡ることになります。
実務的には、良い傾向かもしれませんが、知識が増えることによって混乱が生じます。
つまり、あやふやな覚え方では、逆に混乱を招くことになるため、一言一句正確に覚えることを心がけてください。
また、漢字を正確に覚えることも重要です。
行政書士試験では、普段使い慣れていない言葉が多く出てきます。
「嫡出子」「瑕疵」などの用語が、過去に記述問題で出題されました。
漢字がわからずに、減点なんてことにならないよう注意が必要です。
記述対策として、条文を一言一句覚えていく時間なんてないという方もいらっしゃいます。
しかし、記述対策を行えば、必然的に五肢択一式の問題にも対応できますし、記述は一定の出題傾向があります。
つまり、記述で出題されやすい傾向をつかみ、重要な条文や関連判例を正確に覚えることが、合格できる勉強法なのです。
では、記述で出題されやすい問題は、どのようなものなのでしょうか。
それは、過去問に隠されています。
実は、多くの記述式問題の出題は、過去の問題(五肢択一式含む)から出題されているのです。
例年、民法から2問、行政法から1問、計3問の記述問題が出題されています。
そのうち、行政法の記述は必ずと言っていいほど、過去問から出題されています。
民法に関しても、1問は過去問から出題されています。
つまり、過去問をくまなく学習することで、記述で30点以上は必ず取得できるのです。
記述が30点以下の方は、過去問の復習が不足しています。
もちろん、過去問を単純に解いて、答えあわせをするだけでなく、問題文や答えの隅々まで学習する必要があります。
問われている論点を検討し、用語を必ず暗記してください。
行政法と民法は、必ず過去問10年分くらいは、学習してください(記述も含め)。
基礎法学や憲法、商法、一般知識は過去問学習不要です。
行政法と民法は、問題のひとつひとつを暗記するくらい、何度も何度も学習してください。
最低でも本試験まで、期間を置いて5回は復習してください。
過去問をしっかりと学習すれば、必ず記述で30点以上は取得できます。
では、過去問から出題されづらい、民法のあと1問はどのように学習すべきなのでしょうか。
記述式で3問正解できれば、合格が大きく近付きます。
近づくどころか、3問全て解答できれば、合格間違いなしです。
つまり、出題者側は、3問全てを解答されることは避けたいと考えています。
そのため、民法の1問は、過去問に出題されておらず、また、難易度も高めに設定されています。
では、どのように学習すべきなのでしょうか。
これは、大手予備校や通信教材でも明確な指示はありません。
つまり、問題を予想しづらいのです。
多くの予備校が記述の点数30点を目指すべきだと言っているのは、受験生のことを考えているのではなく、30点以上を取得できるメゾットがないという裏返しでもあるのです。
記述は3問しかないので、非常に的を絞り辛いです。
そのため、各予備校は保守的にならざるおえないのです。
しかし、私は3問全てを解答することができました。
それは、普段の学習方法が重要だと感じています。
確かに1,000条以上ある民法から2問しか出題されないので、的を絞ることは難しいです。
しかし、民法は「生活に密着した法律」です。
民法を学習するときに、常に、「なぜこのような法律なのか」「誰を保護する法律なのか」「この法律が制定された背景はなんなのか」を常に考えながら学習をすることが大切です。
行政書士試験過去問に学ぶ
例えば、平成28年の記述問題をごらんください。(出展:行政書士試験研究センター)
問題:民法の規定によれば、離婚の財産上の法的効果として、離婚した夫婦の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。判例は、離婚に伴う財産分与の目的ないし機能には3つの要素が含まれ得ると解している。この財産分与の3つの要素の内容について、40字程度で記述しなさい。
解答例:婚姻中の共同財産の清算及び離婚後の一方の生計維持ならびに精神的損害の賠償を含む。
いかがでしょうか。
こちらの問題は、過去問でも論点がなかった問題です。
そのため、解答できなかった方も多かったようです。
しかし、シンプルに考えてみてください。
難しい文言が並んでいますが、つまり、「離婚したら財産はどのようなことになるか?」が聞かれているのです。
離婚すると財産はどちらのものになる?
離婚すると生活がきつくなるよな?
精神的に疲弊するだろうな。
一般的な感覚を有していれば、思いつくことだらけなのです。
正確に法律的な言い回しで解答することは難しくても、部分点は狙えるのではないでしょうか。
また、平成27年の記述過去問をごらんください。(出展:行政書士試験研究センター)
問題:権原の性質上、占有者に所有の意思のない他主占有が、自主占有に変わる場合として2つの場合がある。民法の規定によると、ひとつは、他主占有者が自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示した場合である。もうひとつはどのような場合か、40字程度で記述しなさい。
解答例:他主占有者が新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めた場合。
上記の問題も過去問で、聞かれていることがなく、苦労した受験生が多いようです。
こちらも難しく書かれていますが、要するに「どのような場合に、他主占有から自主占有に変わる?」ということです。
他主占有→所有の意思をもたない占有。
自主占有→所有の意思をもってする占有。
問題文にある1つ目は、自分に占有させたものに対して、私が所有していますと伝えることです。
解答はもうひとつを解答すれば良いのです。
確かに、条文を知っていなくては、解答が難しいかもしれません。
しかし、解答例のように、「新しい権限があって、所有の意思を持って占有」すれば、自主占有になることに異論はないと思います。
上記2問のように過去問にない論点でも、シンプルに思考することである程度の解答を導き出せるのです。
法律は、難しい文言で書かれていますが、シンプルに捉えることが大切です。
書かれていることは、意外とそのままだったりするのです。
法律が存在する意味は、様々ですが、トラブルなく社会がまわるように規定されていると考えてよいと思います。
特に行政書士試験では、そのように考えて問題ないでしょう。
トラブルがないように法律がある。
特に民法は生活に直結した法律です。
つまり、一般的な感覚で、「こんな時はどうなるんだろう?」と過去問を解きながら考えることが大切なのです。
もし、ご自身が離婚した場合、財産はどうなるんだろう?と考えると思います。
一般的な感覚があれば、離婚すると財産はどちらのものになる?離婚すると生活がきつくなるよな?精神的に疲弊するだろうな。と考えることは必然なのです。
また、自分が意思を持って物を占有したいと考えた場合には、物を渡してくれた人に所有の意思を伝えたら良いのかな?新しい権限があればいいよね?などの答えを導き出せると思います。
法律、特に、民法は難しく考える必要はありません。
一般的な感覚に沿って、思考すれば解答を導き出せるのです。
もし、上記の問題を見て、考えることができなかった場合は、練習が必要です。
前述の通り、常に「なぜこのような法律なのか」「誰を保護する法律なのか」「この法律が制定された背景はどのようなものか」を考え続ける必要があります。
過去問に出題例のない民法の1問を対応できるようになるためには、日々の学習の中で法的思考法を身につけるしかありません。
ご自身の考えと法律論が異なる場合は、少しづつ修正を行ってください。
法律がすべてではなりませんが、行政書士試験では、規定されている法律がすべてです。
学習中は、「法律はこうあるべきだ」「このような法解釈をするべきだ」など、様々なご自身の考えは出てくると思います。
しかし、合格しないことには、何も始まりません。
試験に合格できれば、ご自身の社会的影響力も大きくなるため、ご自身の考えを様々な形で反映させることができるかもしれません。
そのため、様々なご自身の考えやご意向は、とりあえず置いておいて、合格後の楽しみとして取っておいてください。
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