行政書士試験の構成
行政書士試験は、「基礎法学」「憲法」「行政法」「民法」「一般知識」で構成されています。
その中で、行政書士試験で最も重要な科目は、「行政法」「民法」です。それには、2つの理由があります。
1つ目は、行政書士試験配点の大部分は、「行政法」「民法」で構成されている点。2つ目は、記述が「行政法」「民法」から出題される点です。
つまり、極端な言い方をすれば、「行政法」「民法」のみの学習で合格点を取得することができます(一般知識は足切り点があるため、一般知識は一定の点数を取得する必要があります)。
多くの受験者の方は、まんべんなく学習することや苦手科目を作らないことを心がけている人が多く、それでは数年の学習でも合格できません。
行政書士の実務としては、「基礎法学」「憲法」などの知識は必要ですが、「行政書士試験を合格すること」に重きをおくと、学習はほぼ不要です。
「基礎法学」「憲法」は、法理論を理解するために学習が必要だという講師の方もいらっしゃいます。
もちろん、時間や労力を十分に行政書士試験に使えるのであれば、法理論を考えることも良いでしょう。
しかし、「基礎法学」「憲法」に注力しても、肝心な点数のアップは期待できません。
法律を学びたいのであれば、行政書士試験に合格した後に学べばよいので、行政書士試験合格を目指すのであれば、「法律を学ぶ」のではなく、試験合格という ハードルをクリアするという考えが必要になります。
行政書士試験の合格点について
行政書士試験は、年によって合格率の変動があり、2%台の年もあり、15%程度の年もあります。
また、難易度により、補正処置を行う年もあります。つまり、行政書士試験は、非常に不安定な部分があるのです。
その理由として、行政書士試験が絶対的審査という点にあります。
絶対的審査とは、行政書士試験のように180点以上とれば合格になる審査方法のことです。
相対的審査である、司法書士試験などは、合格基準点に達していても他の受験生のレベルに合わせて、合否が決まります。
つまり、司法書士試験運営側に大きな合否の裁量権があるのです。
一方、行政書士試験は絶対的審査なので、ご自身が180点以上取得できれば、必ず合格できます(一般知識の足切りはあります)。
つまり、行政書士試験は、試験出題側が出題に挑戦しにくい試験なのです。
どのようなことかと言いますと、相対的審査である司法書士試験では、出題の難易度が高くても低くても、上位数パーセントの受験生を合格させるシステムなので、難しい問題も積極的に出題できます。
しかし、行政書士試験は、絶対的審査なので、出題が難しすぎると合格率が低すぎることになり、逆に簡単であれば、合格率が高すぎることになります。
例えば、ある年は2%、ある年は50%の合格率になったら、国家資格として成り立つでしょうか。
様々な意見や問題が出てしまうことは、想像に難しくないと思います。
行政書士試験は、合格率で判断すると、10%程度の合格率を目安に毎年作成されています。
つまり、毎年同じような難易度の出題が多くなるということです。
出題者の心理として、合格率を10%に安定させたいと考えるとどのような結論に至るでしょうか。
これまで出題していない論点より、これまで出題されて正答率が明確になっている論点を出題したいと思いませんか?
ご自身が行政書士試験問題の作成者になったとして、大きな改革やこれまで出されていない論点を出題するでしょうか。
もちろん、出題傾向の変更の可能性はあります。しかし、保守的に、試験問題を作成する可能性が高いのは明確です。
試験出題者の方は、各分野で著名な方が携わっています。そんな著名な方々が、わざわざ冒険をしようと思うでしょうか。
つまり、行政書士試験では、過去問で出題された論点のみを確実に理解することで、合格点に到達することができる試験なのです。
仮に、行政書士試験を高得点で合格したいと考えていらっしゃる場合は、学習方法も異なってくると思います。
しかし、合格点を目指すのであれば、無駄な努力は必要ないのです。
行政書士各科目ごと学習方法 基礎法学について
基礎法学は、2問のみの出題となり、全体の得点の2.7%しか占めていません。
そして、「基礎法学」という名前の通り、とても幅広い概念で出題されます。
また、法思想に関して出題されることもあります。法思想というのは非常に抽象的で、明確になっていない部分も多い学問です。
その中、思想の内容を熟知し、答えることは至難の技と言えます。
マークシート式なので、すべての思想がわからなくても2つくらいの思想を理解しておけば、答えを導き出せることもあります。しかし、世界にはいくつの思想があるのでしょうか。
対策するとなれば、すべての思想に目を通す必要があり、試験という限られた時間の中で正解を導かなくてはなりません。
また、前述の通り、基礎法学は2問のみの出題(8点)しかありません。
8点のために、しかも、出題されるかもわからない論点を検討する必要はないのです。
基礎法学は、2問のうち、1問は難しく、1問は簡単な傾向にあります。
そのため、難しい1問は捨て問にして、簡単な1問を確実に正解するというスタンスが良いでしょう。
簡単な1問は、民法や行政法をしっかりと学習すれば、法解釈の力がつき、解けるような問題です。
つまり、端的に言えば、「基礎法学」は学習する必要はありません。過去問を学習する必要もありません。
民法や行政法は、同じような論点が繰り返し出題されるため、過去問がとても重要です。
しかし、「基礎法学」は、毎年違う論点で、出題意図が不明な問題も多いため、的を絞り辛いです。
そのため、行政書士合格を目指すのであれば、基礎法学はないものと考えて良いでしょう。もし、基礎法学が心配な方は、司法制度について学習しておくと良いです。
2005年度以降、司法制度に関する問題が頻出されているためです。
主な司法制度改革 裁判制度等の改革
• 民事司法制度の改革 • 裁判の充実・迅速化 – 計画審理など • 専門的な事件への対応強化 – 専門委員制度など • 知的財産権関係事件への対応強化 – 知的財産高等裁判所の設置など • 労働事件への対応強化 • 家裁・簡裁の機能充実化 – 人事訴訟の管轄移管、少額訴訟制度拡大 • 民事執行制度の強化 • 裁判所へのアクセスの拡充 – 法テラスの設置、民事扶助の充実化 • 裁判外紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化 • 司法の行政に対するチェック機能の強化 • 刑事司法制度の改革 • 刑事裁判の充実・迅速化 – 公判前整理手続 • 被疑者・被告人の公的弁護制度の整備 • 検察審査会の議決への法的拘束力付与 •「同一の事件について起訴相当と2回議決された場合には必ず起訴 • 国際捜査・司法共助制度 • 身柄拘束の是正 – 監獄法の改正 • 犯罪者の社会復帰と、被害者・遺族の保護 • 国際化への対応 • 民事司法の国際化 • 刑事司法の国際化 • 法整備支援の推進 • 弁護士(法曹)の国際化人的基盤の整備 • 司法試験合格者数の増加 • 裁判官・検察官の増員 • 法曹養成制度改革 – 法科大学院制度・新司法試験の導入、司法修習制度の変更 • 弁護士へのアクセス拡充 – 法テラス、公設事務所の設置、弁護士報酬の透明化、弁護士広告規制緩和 • 弁護士の国際化 – 外国法事務弁護士との特定共同事業の要件緩和 • 隣接法律専門職種の権限拡大 – 司法書士に簡裁訴訟代理権 • 検察官制度の改革 • 裁判官制度の改革 – 弁護士任官、裁判官任官手続の透明化国民的基盤の確立 • 裁判員制度の導入:2009年(平成21年)5月21日から • 専門委員制度
行政書士各科目ごと学習方法 憲法について
「憲法」は例年、五肢択一式が5問、多肢選択式が1問出題されています。
出題のパーセンテージは、9.3%となり、全体の約1割が憲法の知識を問う問題になります。
そのため、基礎知識のように、一概に学習をしなくて良いということは言えません。一定の学習が必要です。
憲法は日本の最高法規で、憲法に相反する法律は原則として無効となります。つまり、憲法が示していることは、すべての法律の道しるべとなっているのです。
そのため、憲法を理解していると、民法や行政法知識にも良い影響を与えます。
民法を例にあげると、民法は1,000条以上あり、すべてを正確に暗記することは不可能です。
また、民法の出題は、その1,000条以上ある中から出題されるため、試験本番になって、あまり知識がない条文から出題されるなんてことは日常茶飯事です。
その際、憲法の知識が役立ちます。
前述の通り、憲法は最高法規です。
民法であろうと行政法であろうと、憲法に反することは許されないのです。
つまり、憲法を正確に理解しておくことで、民法や行政法の条文を理解していなくても、「感覚的」に正解を導くことが可能な場合があるのです。
もちろん、民法と行政法は、行政書士試験にとって、もっとも重要な科目なので幅広く正確に理解している必要があります。
しかし、行政書士試験は簡単ではありません。
受験者が民法や行政法を集中的に学習し、知識があることは、出題者も理解しているのです。
そのため、民法や行政法では、少しひねった問題を数問出題します。
一般的に、「捨て問」と呼ばれるものです。「捨て問」は名前の通り、捨てる問題です。つまり、正解をしなくても良い問題です。
「捨て問題」以外の基礎問題を全て正解することができれば、合格点に到達することができるため、心配は不要です。
しかし、同時に、少々異なる見解もあります。もちろん、「捨て問題」以外の基礎問題を全て正解できれば、合格点に達するということは間違いのない事実です。
しかし、「捨て問題」以外の基礎問題を全て正解することは可能なのでしょうか。基礎問題といえども、確かな法知識がなくては解けない問題ばかりです。
また、「1年間の努力を、試験日、試験時間に全て出せるのか?」「隣の人が貧乏ゆすりしていないのか?」「試験日の体調は万全なのか?」「交通機関に乱れはないのか?」「家族全員健康なのか?」「忘れ物はないのか?」そんな中、大きなプレッシャーのかかる試験本番で、本当にケアレスミスしないで、正確に問題を解くことができるのでしょうか。
余談ですが、私の行政書士本番の日にもイレギュラーが起きました。
私の席は、一番後ろで横が空席でした。集中できる環境で、運が良いと思っていたのですが、なんと、試験官の人たちが私の横の席を休憩席として使用する事態になったのです。
行政書士試験官の方は、年配の方が多いです。
そのため、代わる代わる試験官の方が、その席に座るのです。しかも、試験官の方同士が、ひそひそ話しを始めたのです。
かなり、集中の妨げになっていたので、正直、文句を言いたくなりましたが、文句を言う時間ももったいないと考え、我慢しました。
揉めて試験時間を十分に取得できないということを最も避けたかったのです。
私の場合は、イレギュラーすぎますが、上記のような事も起こる可能性があると、心に余裕を持つことは大切だと思います。
本題に戻りますと、私は、ケアレスミスは必ずしてしまうものだと思います。 と言うよりも、ケアレスミスありきで試験対策を行わなくてはならないと考えています。
1問や2問は、必ずケアレスミスをしてしまうと考え、対策を練らなくては、試験本番のプレッシャーの中で、余裕を持つことはできません。
ケアレスミスをしないのがベストですが、ケアレスミスをしても良いと考えていたほうが、結果的にうまくいきます。
これは、心理学では有名な話です。例えば、子供がジュースを運んでいるとします。多くの親は、「こぼさないでね」「気をつけてね」と声をかけると思います。
間違ってはいませんが、これは、子供のミスを誘導させると言われています。
子供は、「こぼさないでね」と言われることで、「こぼす」ことを想像してしまうのです。そのため、「こぼさないでね」と言うと、こぼしてしまう可能性を高めてしまうのです。
つまり、「こぼさないでね」「気をつけてね」ではなく、「あっちのテーブルに置くんだよ」「(相手がいるとして)ジュースを持って行ってあげたら、きっと喜んでくれるよ」など、ポジティブな声がけのほうが、ミスが少なくなるのです。
これは、試験や自分自身に対しても同じです。
「捨て問題」を作って、基礎問題を全て正解しよう。なんて考えていると、「基礎問題は全て正解しなくてはならない」と自分にプレッシャーを与えることになります。
過度のプレッシャーは、ミスを起こしやすくなります。無駄に自分にプレッシャーをかけることは、試験にとってマイナスに働くことも多いのです。
もし、大きなプレッシャーを感じたほうが成果を出せるタイプだと感じている場合は、どんどんご自身にプレッシャーをかけるべきだと思います。
しかし、多くの人は、プレッシャーはマイナスに働くことが多いので、無駄なプレッシャーはかける必要ありません。前置きが長くなってしまいましたが、本題に入ります。
上記を踏まえて、憲法の学習では最も大切なことは、「憲法条文の正確な知識」です。
憲法は100条程度しかなく、十分に暗記が可能です。
また、憲法の問題では、条文そのものの知識が出題されることも多くあり、いわゆる「捨て問題」も民法や行政法と比べて少ないです。
つまり、条文を暗記しているだけで、憲法は十分に対応が可能なのです。
憲法には判例知識も必要だという講師の方も多いです。しかし、判例は莫大な数があり、問題の1割程度のパーセンテージしかない行政書士試験で、判例を追うことはとてもリスクが高いと考えます。
憲法は、前述の通り、五肢択一式が5問、多肢選択式で1問出題されます。憲法条文の知識のみでも、五肢択一式5問中2~3問正解、多肢選択式1問(8点)中、4点~6点が取得できます。
多肢選択式問題は、判例の知識を問うものなので、判例を知らなくては解けないと考えている人も多いですが、文脈等で十分に正解を導くことが可能です。
多肢選択式問題は、どちらの判例から出題されるのかわからないということだけでなく、判例を一言一句暗記することは不可能です。
また、憲法の多肢選択式問題を全て正解しても8点です。
そのため、憲法に多くの学習時間を費やすことは、効率的ではありません。憲法は、時間をあまり取らず、割り切った学習が大切です。
| クレアール | 「特徴」 クレアールは、教材のボリュームに比べて割安の費用で受講できます。また、「合格返金制度」「受験料負担制度」「合格お祝い金」「学費ローン無金利」の各種割引制度が充実しており、上記の割引制度を活用することで(1年目で合格)、教材の負担費用をほぼ0円に近づけることが可能です。 「主な受講ツール」 web(オンライン) 「費用」 30,000円台〜 |
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